温暖化というファシズム(CO地球温暖化論1)

実際私たちは、今、かつての軍国主義時代の国家総動員体制と同様な状況に向かっているのかもしれません。と申しますのも、地球温暖化に関しては未だ学問的な議論の余地があるとされているにもかかわらず、政策は一人歩きしマスコミの大合唱がそれに続き、当事者たる産業界も”地球にやさしいエコ○○”などと自社の取り組みをアピールしているからです。反対する者に”懐疑論者”・”否定論者”といったレッテルを貼り、果ては”人類の敵”呼ばわりするような世相は、本書で検証してきたいくつかの場面と重なり合い、”温暖化ファシズム”と呼んでもよい状況ではないでしょうか。

こうした混乱を整理するためには、過去100年の世界各地における「温暖化」は認められるとしても、それが「異常気象」や「COによる温室効果」と同義語ではなく、はたまた「自然破壊や環境汚染」と結び付ける思考回路を断たねばならないと赤祖父俊一氏は主張しています。何故なら、過去100年に起きた気温の上昇は0.6°Cほどであり、これは一人の人間がその一生に体感できる温度変化ではないし、「今年の夏は異常に暑い」とか「異常な暖冬」などというのとも異なるからです。「異常気象」というのは100年で0.6°Cというような緩やかな変化ではなく、ほとんど毎年感知されるもっと激しい変化であり一定期間(平年)の平均値からの偏差と考えられます。「異常気象」は一般に長く続くことはなく気温も年毎に大きく変化するので、短期間でそれらの現象を取り上げても意味はなく、5年平均・10年平均で変化が持続した場合に初めてこれを「気候変動」と考えるのが正しいとされています。

氏が、気候学は自然科学的に考察すべきであり、”物理過程を理解すればあとはコンピュータで処理すればよい”とするアプローチ-IPCCの考え方はこれに近い-が拙速過ぎるという場合、そこにはたかだか100年という期間ではなく、もっと長期に恒るデータを”身体を張って”集めるべきだとする科学観があると思われます。それは現場での実証と学際領域を重んずる考え方であり、考古学的要素を排除して机上でコンピュータを操作するだけの若い世代への警鐘でもあるようです。また、細分化された科学のある分野の一部のデータのみで物事を判断するのではなく、全分野の変動を研究しなければならないというのも正当な考えと思われます。さらにIPCCのいわゆる30カ国の2,500人の専門家の「一致した見解」については、ある時点での一致した見解を破るところにこそ学問の進歩があると評する辺りに、私は健康な科学精神を感じ取るのです。アラスカという地球全体の気候変動がより顕著に出現する地で長年研究してきたという点でも、氏の発言が最も信憑性があると思われます。

図3‐3 CO

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出典:赤祖父俊一「正しく知る地球温暖化」

 ではIPCCの報告とはどんな内容なのか。2007年発表の「20世紀の中頃から観測された気温上昇の大部分は、人類活動による温室効果ガスに由来する」というのがその要旨であり、この主張を裏付けるようにCOのグラフ(図3‐3)は産業革命の頃から上昇し20世紀後半になり急上昇を続けています。

図3‐4 過去450,000年間における大気中の炭酸ガス量(上)、気温(中)、メタンガス量(下)の変化。
南極中部のポストック基地の氷コアの解析による。

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出典:赤祖父俊一「正しく知る地球温暖化」

けれども人類による化石燃料使用の急速な増加が1946年以降のことであることと、人類がいなかったはるか以前の氷河期頃にもCO濃度の上昇があった(図3‐4)こと-これはIPCCも認めている-を考えると、人類の化石燃料使用量と温度の相関をみる形にしなければIPCCの主張は正当とはいえないはずです。

図3‐5 過去(1880~2000年)の地球平均気温の変化(Global)と同期間の北極圏(主に北極海の海岸に沿った
観測点)における気温変化(Arctic)。加えて、同期間における石炭、石油、天然ガスの使用量。
化石燃料の使用の急速な増加が1946年頃より始まったということに注意(単位は1000万トンの石油に相当)。

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出典:赤祖父俊一「正しく知る地球温暖化」

 しかし、上の補正グラフ(図3‐5)を見る限りでは、どうも気温と人類が発生させたCOとの因果関係が明らかとはいえないと思われるのです。先程も申し上げましたが、化石燃料使用量が飛躍的に増加するのは第二次大戦後、石油が燃料の主体になる時からであるに対し、気温の上昇はそれ以前から始まっているからです。氏によれば温室効果をもつ分子はCOの他に水蒸気・メタンガスその他もあって、これらの物理過程に関しては専門家の間でも議論があり未だ解明されていないということです。

そうした不明な気候変動の要因もあるからでしょうか、IPCCはやや長期的なスパンに基く気温変化のグラフ(図3‐6)を、2001年報告で提出しています。この図によりますと、気温は西暦1000年頃から緩やかに低下してきたが、1900年頃から急激に上昇することがみてとれます。つまり、20世紀以降の人類の産業活動の増大と気温との因果関係が強調されているわけです。確かに南極の氷を用いて調べた、過去の氷河期の気温とCO濃度の相関関係はそれを物語るともいえますが、しかしここでもCO上昇が先だったのか気温上昇が先だったのかという問題があるようです。これについて氏は、ここ数年のより詳しい研究によると、気温の変化が800~1300年程先行するという結果も出ているが、確認はもっと先の話としています。

図3‐6 ホッケー・スティックと呼ばれる、木の年輪をもとにした、1000年から最近までの気温変化
(ホッケー・スティックの写真を下に示してある)

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出典:赤祖父俊一「正しく知る地球温暖化」

 そこで、氏は1880年以前の気温の変化を探るわけですが、この試みは1880年以降ほぼ直線的に-CO濃度とは無関係に-上昇している温暖化はいつ頃から始まったのかという問題意識に基づくものです。しかし1800年代の寒暖計による記録は非常に少なく、概ね19世紀は現在よりも寒冷だったと推定できる程度だとされます。もし机上でコンピュータを操作するだけの気候学ならここが限界となりますが、一方ではあらゆる手段を使って過去の気温変化を研究する気候学的アプローチもあるのです。それは農産物の収穫量や河川の凍結時期、過去の時代の絵(氷ったテムズ川の上のスケート風景が描かれている17世紀のもの)や文献上の記録(開花日や飢饉など)をもとにした方法であり、こうして推測すると17・18世紀もまた現在より寒冷だったといってよいようです。

図3‐7 北大西洋の海底堆積物質の酸素同位体(O18)から推定した気温。
1000年頃の温暖期、小氷河期、さらに紀元前には現在より大きな気温変動があったことが示されている。

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出典:赤祖父俊一「正しく知る地球温暖化」

 では過去の時代は常に寒冷だったのでしょうか。それを知るには木の年輪による方法・海底堆積物に含まれるO同位体の量から海水面の温度を推定する方法などがありますが、複数の方法で共通の変化が認められれば一定の気候変動モデルを抽出することが可能となるわけです。こうして得られたグラフが上のもの(図3‐7)であり、ここで分かるのは次のような点です。

  1. 紀元前500年頃と西暦1000年頃は現在より暖かかった、つまりIPCCのいうように「現在の温暖化がかつてない程異常である」とはいえないこと。
  2. 16・17世紀頃まで遡る寒冷化は13・14世紀位から始まりこの頃は「小氷河期」と呼ばれる。現在の温暖化は1800年頃より始まる直線的変化であり、これは「小氷河期」からの回復過程と考えられる。
  3. 西暦1000年頃は現在より比較的暖かかった時期であり、これは「中世温暖期」と呼ばれる。この頃アイスランド、スカンジナビアからグリーンランドへ移住した人間たちがいたが、その後の小氷河期に彼らの子孫は全て死に絶えたという事実にも符合する。

IPCCのグラフ-その形からホッケースティックと呼ばれる-は、故意か偶然かはともかく、中世温暖期と小氷河期を無視したものであり、温暖化についての結論は、
「現在進行中の温暖化の大部分(約5/6)は地球の自然変動であり、人類活動により放出された炭酸ガスの温室効果によるのはわずか約1/6程度である可能性が高いということである。すなわち、現在進行している温暖化の5/6は、「小氷河期」という比較的寒かった期間(1400~1800年)から地球が回復中のためである。寒い期間からの回復は当然温暖化であり-(中略)-自然変動である。」
となるわけです。

図3‐8 米国科学アカデミーが過去の気温変動研究で信用度の高いものを集めたもの。
1800年頃より気温上昇が始まっていることがわかる

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出典:赤祖父俊一「正しく知る地球温暖化」

 この結論を裏付けるように、氏の元には米国科学アカデミーの全員から連絡があり、その報告書中の図(3‐8)が、明らかにこうした事実と符合するという内容だったとされています。日本でも過去の歴史的事実から当時の気候を推測した、民俗考古学者の西岡秀雄氏がいます。トチの実と土器の分布から弥生時代を寒冷期とし、オーロラの観察記録から江戸中期は今より寒く、1970年代に地球寒冷化説が風靡していた時にも「あと数世紀は暖かい」とした主張を、過去3000年のグラフと比較してみるのもよいのではないかと思われます。

【参考文献】

世界経済のネタ帳
日本生活習慣病予防協会
日本経済新聞2010年10月24日朝刊
ボルマー&ヴァルムート著「健康と食べ物,あっと驚く常識のウソ」(草思社)
田中平三監修「サプリメント・健康食品の『効き目』と『安全性』」(同文書院)
福岡伸一「生物と無生物の間」(講談社現代新書)
赤祖父俊一「正しく知る地球温暖化」(誠文堂新光社)
オープンコンテントの百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日経電子版2009年11月26日
産経新聞2003年6月22日
【2010年ビルダーバーグ会議・緊急報告】”主役”不在の今年のビルダーバーグ会議。崩壊しつつある”グローバル・ガバナンス”の行方 (1) 2010年6月10日
農林水産省HP
ビジネスのための雑学知ったかぶり「日本の食料自給率は40%
財団法人エネルギー総合高額研究所HP
シフトムHP
近藤邦明「環境問題を考える
永濱・鈴木編「[図解]資源の世界地図」(青春出版社)
武田邦彦「温暖化謀略論」(ビジネス社)

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