石原莞爾の感性

 戦前一世を風靡した”西式健康法”というものがありますが、この代替療法との出会いがなければ現在の自分を考えることができないほどその思想は私にとって革命的でした。石原莞爾の名を知ったのもその過程でしたが、因みにその知識は、
「石原莞爾先生は満州事変の立役者として名を遺しているが、戦前にかの有名な『世界最終戦』という著書で、世界最終戦争の後に永久平和がくるとし、そのモデル社会を日本に建設するのだという理想を掲げ、その建設の理念は『都市解体、農工一体、簡素生活』の三原則によるべきだと説いていた。とくに私を共鳴させたのは、人間の真の健康は文明に毒されては得られず、大自然に則った生活を行わなければならないという主張だった。」
とされる一文程度でした。
 同じ東北出身という点と「都市解体等」というスローガンが気に入って、なんとなく若いころから好印象を持っていたことは確かでしたが、今回調べてみてあの宮沢賢治との共通点、-二人とも法華経の熱心な信者でありまた両者とも農業や農民に関心を寄せていた-に東北人であるが故の強さと弱さを感じたというのが率直なところと言えます。
 石原とその政敵であった東條の人気を比べてみると、圧倒的に石原の方が高いといえますが、その理由は、(1)反東條、(2)日米戦で実戦に携わらなかったため人物の能力が未知数、(3)いろいろな奇行が受ける、(4)東京裁判時の発言が痛快に伝えられている(実際は違う)、(5)陸軍中将まで登り詰めた人間が田舎で百姓というのも受ける、などがあげられます。しかしこの人物を評価するには、当時の状況にあてはめて考えてみることが重要だと思われます。
 明治22年(1889年)山形県鶴岡に生まれた石原は、仙台陸軍幼年学校から陸軍士官学校と進み、連隊長命令で陸軍大学へ入学し次席で卒業します。この時成績は首席であったものの素行や言動が問題で降格されたといわれており、要するに天才肌で優等生的ではなかったということです。その思想の一つに日本を盟主としたアジア主義があげられると思いますが、この考えは日韓併合前夜の現地駐屯や、漢口駐在時代の経験をもとに固まったと考えられます。また、ドイツ駐在武官時代の戦史研究や経験が発揮されるのは満州事変からであり、昭和3年(1928年)に着任した石原と翌年高級参謀として赴任してきた板垣征四郎との間では、満蒙領有構想が謀議され秘密裏に完成していったのでした。関東軍がわずか1万数千の兵力で23万の張学良軍を圧倒し、結局僅か5ヶ月で満州全域を占領、翌年”満州国”が建国されることはご承知のとおりです。軍事的戦果からすると、これは第二次大戦におけるドイツの電撃作戦に匹敵するかそれ以上のものとされ、作戦の立案・実行を行った石原はこの時から”天才”として注目されることとなるのでした。満州事変に成功した石原は、その後参謀本部作戦課長として陸軍の中枢に入りますが、それは持論である”日米最終決戦”に沿ってまず生産力を高める=国家総動員体制へ向かうための橋頭保でもあったのです。
 2・26事件に際しては一応鎮圧側に回りますが、当初はこのクーデターを利用しようという意図をもっていたかも知れないともされています(松本清張)。以前ご説明した「陸海軍大臣現役武官制」が発動されるのは、翌年の広田内閣総辞職・宇垣内閣流産・林内閣の成立に際してであり、石原はひたすら「重要産業五ヶ年計画」の策定に向かうのでした。この当時参謀本部作戦部長という立場で、全陸軍を動かすことのできる権限を掌握していた石原が、何故この年起こった日華事変に際して不拡大方針を取ったのかといえば、「今は生産力を高めるべき時」という判断からだったのです。しかし、2・26事件で皇道派が一掃された陸軍は既に統制派の東條等の時代となっており、無派閥の石原は左遷され、以後歴史の中枢からは姿を消します。
 冒頭で私が感じた石原の強さと弱さというのは、一つは常識にとらわれない物の見方・考え方であり、この点で彼を評価する人々が多いのは事実です。しかし東北人故の農本主義的理想主義が、現実に裏切られていったことも否定はできません。たとえば「王道楽土・五族協和」という満州国のスローガンがそれで、当時の状況ではしょせん空想的過ぎたのではないかと思われるのです。また、戦後の彼が唱えた「都市解体・農工一体・簡素生活」という理念も、アメリカの物量を眼にした大衆によりいみじくも裏切られていったことは指摘するまでもありません。さらにこの形で二度目・三度目の”日米決戦”に備えるとする彼の戦略について申し上げれば、それは経済や文化のレベルへ変貌していったのではないかと思われます。都会人に同化できなかった彼の眼に映っていたのは、根本的には当時の東北の圧倒的貧しさだったのかも知れません。

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