植民地から見た第二次大戦

ここまでは主に日本人の”内面的危機”をみつめるため、日本を中心として政治や外交の問題をみて来ましたが、次に1929年(昭和4年)の世界恐慌から第二次大戦とそれに続く歴史を植民地の側からみてみたいと思います。と申しますのは、第二次大戦を自由と民主々義を守るための”反ファシズム戦争”と規定してしまうと、植民地や資源を求める”帝国主義国同士の闘い”という側面が見落とされてしまうからです。また大戦後の世界、特に現在まで解決していないポスト・コロニアリズムの問題も不明に帰してしまうのではないかと思われるからです。
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「超克できなかった近代」の節でもふれましたが、第二次大戦後の世界の枠組みについて米英ソ(中)各国首脳は何回も会談を重ねており、その中では確かに反ファシズム・自由と人権などについてもふれられていますが、同時に領土や植民地分割についての協議も重ねられたのです。上の地図をご覧いただけば第二次大戦前、英仏蘭をはじめとする西欧各国の植民地がいかに広大であったかが一目瞭然だと思います。また日本の勢力も朝鮮・台湾・中国大陸から樺太まで及び、アメリカもフィリピンからキューバ・プエルトリコまで触手を伸ばしていたことが分かります。では中露はどうだったのかと言えば、内蒙古・チベット・東トルキスタンは大清帝国の、バルト三国やロシア周辺の衛星国群は帝政ロシアの各々植民地的性格の強い地域だと申し上げられます。歴史が領
土と(人間を含む)資源やエネルギーの争奪戦であったこと、そしてそれが20世紀以降の資本主義による生産量の飛躍的発展と切り離せないことがお分かりいただけると思います。
植民地国全体を概観しますと、世界恐慌から第二次大戦勃発までの各国は、一次産品価格の低迷で宗主国よりはるかに厳しい影響を被ったとされています。しかし第二次大戦は宗主国不在の時代でもあり、欧米の植民地各国で独立運動の機運が芽生えてきます。この間日本の支配地域で、「大東亜共栄圏」の概念が独立運動に寄与したのか否かは微妙ですが、第二次大戦がなければ各国の独立がもっと遅れたことだけは確かだったでしょう。大戦後戻って来た宗主国は再び統治を復活させようとしますが、戦時にすっかり基盤ができてしまった独立運動を押さえ込むことはできず、アジア各国は武力で(例えばインドネシアと蘭・ベトナムと仏等)、あるいは非武装抵抗で(インドと英等)独立していくことになります。このうち冷戦構造や中露対立でこじれたのがカンボジア・ビルマなどであり、ベトナム戦争や東チモール問題などもこの枠組で考察すべき問題だと思われます。そして1960年代のアフリカ諸国の大量独立を経て”植民地”は解消されていったのでした。
しかし独立後の各国の歩みは順調ではなく、先進工業国の余剰農産物による一次産品価格の長期低迷と特化した社会経済構造の遅れは、”南北問題”という格差を生み出したのです。1970年代の資源ナショナリズムは中東の産油国に関しては地位向上の機会だったわけですが、大半の諸国にとっては貿易赤字と対外債務のさらなる膨張をもたらしただけに終わったのです。特に新興のアフリカ諸国では、この対外債務がハイパーインフレにつながり政治・経済を混乱させることとなったのでした。ただ、石油ショック以降も工業製品の輸出急増によって一定々度の開発に成功した地域が出始め、これら諸国が”NIES”(新興工業経済地域)と呼ばれたことは記憶に新しいことと思われます。これには韓国・台湾・香港・シンガポール・タイ・マレーシア・中国などが含まれていました。しかしこうした徴しも、日本のバブル崩壊とアジア金融危機によって、1980年代をもって終わりを告げることとなるのです。

【参考文献】

「近代日本総合年表」第一版(岩波書店)
武者小路・姜・川勝・榊原「新しい『日本のかたち』」(藤原書店)
オープンコンテントの百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
保坂正康「昭和史七つの謎」(講談社文庫)
歴史ぱびりよん 概説・太平洋戦争 終戦工作その1
マスコミが隠してきた日本の真実を暴露するまとめサイト GHQの占領政策と影響
吉本隆明「現在はどこにあるか」(新潮社)
関東学院大学 自然人間社会
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