半国家の安全保証

戦後という時代を現在から振り返る時、日米関係が大きく揺れた時期-それが取りも直さず両国の関係を変化させるチャンスでもあった-は、三度あったと私には思われます。一度目は占領期の吉田内閣が「軽武装・経済経上主義」を戦後政治の基軸に据えた頃、二度目は講和条約締結前後の頃、三度目が60年安保の前後であることは、もう読者にもお分かりいただけると思います。そして四度目が現在なのだと申し上げても、驚かれる方はそうはいないのではないかと考えております。何故なら戦後という時代に内在した二重性、あるいは日本国憲法と日米安保条約の矛盾が今ほどきしんでいる時はないと思われるからです。戦後長らくその時々の”解釈”や”運用”によって保たれて来た日米関係をもっと透明にすることでしか、今の危機は乗り越えられないのでないかと懸念されます。榊原は、
「やはり日本が国家として、ネイション・ステイトとしてのプライドとインテグリティを、安全保障・経済・政治すべての面でもつ必要がある」
と言っています。
現在の日本を含めたアジアの関係というのは、「アメリカがハブで、スポークがたくさん出ている」、というような形で、朝鮮半島をみてみると日米安保・米韓相互援助条約はあるが、日韓の間にはそうした体制がありません。三十八度線以北を実効支配している北朝鮮の存在がそうした現状の素因となっているわけです。けれども冷戦構造が終結した今、しかも南北合わせてもGDP規模が日本の1/5以下という段階のうちに、日韓関係を歴史的経緯から切り放し成熟させることはできないのでしょうか。またASEAN諸国との間も、同様に見直していくことが必要になっている時ではないかと思われます。
しかし榊原は、「日米安保をどうするのかという基本的な問題に答えなければ、アジアとの協調はできない」と言います。外務省の外交の基本にアメリカのトラウマがあり、すべての問題が最後には全部安全保障の問題に戻ってくるからだというのです。結局、
「安保条約は改定しなければいけないし、また、憲法を改正すべきだと思います。日本が独立国としてのきちんとした体をなした上でならば、アメリカとの友好関係を維持するのはいいと思いますけれども、それと同じスタンスで中国との友好関係も考えるというところにもっていかないと、いつまでたっても日本はグローバルなパースペクティブをもてないし」
どこの国も相手にしてくれないからだといわれるのです。
確かに安全保障にはさまざまな面があり、日本政府も1980年に”総合安全保障”などという言葉を用いています。これがどういうものかといいますと、従来の考え方は一方で自主防衛を目ざす軍備増強と、他方で平和主義に基づく軍備廃止論の二極に分かれて、この問題を現実的に考える国民的環境が育ってこなかった。しかし現代の安全保障は軍事だけに留まらず、資源・エネルギーや食料など多岐に恒るのでそれら全体を総合的に整備してゆくのがよい、というようなものです。しかしこの論こそ抽象論であることは、中東に10年以上かけて築いた埋蔵量二百何十億バレルという油田の権益を、アメリカの外交上の要求に屈して放棄せざるを得なかった経緯をみれば明らかです。またサハリンでのガス・石油権益の放棄も、元をたどれば日米ソの関係へ行き着くとも申し上げられます。同じ政府報告が、第二次大戦後の東西ドイツや南北朝鮮を引き合いに出し、日本は幸い悲劇は免れたが外交や国防の問題は特異的混乱状態にあるとし、
「一国の安全が軍事だけで保てないと同時に軍事抜きで成り立たない」
などと締めくくっているのは、官僚的二枚舌以外の何物でもないといえるのではないでしょうか。と申しますのも、1990年代半ば以降は軍事的で声高な外圧は鳴りを潜め、その裏で静かに通商関係が変質しつつある、気付かぬうちにアメリカンスタンダードに侵蝕されているという事態が進行しているからです。

【参考文献】

「近代日本総合年表」第一版(岩波書店)
武者小路・姜・川勝・榊原「新しい『日本のかたち』」(藤原書店)
オープンコンテントの百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
保坂正康「昭和史七つの謎」(講談社文庫)
歴史ぱびりよん 概説・太平洋戦争 終戦工作その1
マスコミが隠してきた日本の真実を暴露するまとめサイト GHQの占領政策と影響
吉本隆明「現在はどこにあるか」(新潮社)
関東学院大学 自然人間社会
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