輓をつけられた国

 ジャーナリストの関岡英之氏はその著書「拒否できない日本-アメリカの日本改造が進んでいる」(文春新書)の「あとがき」で、次のように書いています。
「いまの日本はどこかが異常である。自分たちの国をどうするか、自分の頭で自律的に考えようとする意欲を衰えさせる病がどこかで深く潜行している。私が偶然、アメリカ政府の日本政府に対する『年次改革要望書』なるものの存在を知ったとき、それが病巣のひとつだということはすぐにはわからなかった。
 だがこの病は、定例的な外交々渉や、日常的なビジネス折衝という一見正常な容態をとりながら、わたしたちの祖国を徐々に衰退に向かって蝕んでいるということに、私はほどなくして気づかされた。まるで癌細胞があちこちに転移しながら、自覚症状の無いまま秘かに進行していくように、私たちの病はすでに膏盲に入りつつある。」
 本章のこれまでの考察で、読者は日本がアメリカへの従属を深めていること、計画が着々と進められてきたことがお分かりいただけたと思いますが、どうやら事態は最悪のシナリオヘ向かって進んでいるのではないかと思われます。「冷戦終了後の世界」でもふれたように、ドルショック後のアメリカ経済はその後急速に地盤沈下を起こしていくのですが、対照的に日本は90年代のバブル崩壊まで高い競争力を維持したため、アメリカの対日赤字は膨らむ一方だったのでした。円安ドル高是正を図ったプラザ合意(1985年)以後もこうした流れが止どまらない中、米議会では相手国に対する強力な報復措置を含むスーパー301条が通過し、こうした事情を背景に生まれたのが「日米構造協議」だったのです。それは従来の個別品目や為替などに範囲を限定しない、商慣習や流通構造など国のあり方や文化にまで交渉範囲を広げるものであり、1989年から1990年までの間に計5回開催されます。そして1993年には「日米包括経済協議」と名を変え、1994年から始まる現在の「年次改革要望書」へと受け継がれる流れが形成されたのです。
 宮澤・クリントン会談で定められたこの「要望書」は、表向きは日米両政府が相互の経済発展のため、改善が必要と考えられる相手国の規制や制度について指摘し合う文書とされますが、関岡氏によるとアメリカの国益追求という色彩が一貫しており、対日要求がそのまま日本政府の施策として実行されており、アメリカ政府による”日本改造”ともいえるものだと指摘されています。そういわれると、「日米包括協議」までは私たちもマスコミの報道で概略は聞かされていましたが、「年次改革要望書」以降の経緯はほとんど報道されていないことも不思議といえばいえるのです。そうした意味では氏のいうようにマスコミもバックアップしているのであり、以前に申し上げた「世論操作」は着実に進展しているといわざるを得ません。
 では「年次改革要望書」-一応の民主々義として双方の内容は両国大使館のウェブサイトに公開されている-のうち、日本で実現された施策にはどんなものがあるのかを、次にみていきたいと思います。
 ・1997年 独占禁止法改正・持株会社解禁
 ・1998年 大店法廃止・建築基準法改正、
 ・1999年 労働者派遣法(人材派遣の自由化)
 ・2002年 健保改正(本人3割負担)
 ・2003年 日本郵政公社発足(2007年民営化)
 ・2004年 司法試験制度変更・製造業派遣解禁
 ・2005年 道路公団分割民営化、新会社法成立
 ・2007年 新会社法のうち三角合併解禁
 この間2000年4月に自民党清和会系から22年ぶりに誕生した森喜朗内閣が2001年4月までを担当し、その後引き継いだ小泉内閣が2006年9月まで”構造改革”を叫んだことは記憶に新しいと思われます。関岡氏は、これらの施策のうち郵政民営化は国民の財産を外資に売り渡すもの、また三角合併は外資による日本企業の買収をし易くするもの等と述べていますが、ここでは経済アナリストの森永卓郎氏の解説(2007年10月時点)をもとに、”小泉構造改革”の中でも最大の問題だった「郵政民営化」をみていきたいと思います。
当時民営化のメリットとして提唱されたのは、
(1) 競争原理の導入による利便性の向上
(2) 民営化により法人税・印紙税等の納付義務が生じることで税収が増大
(3) 自由に資金が運用できることで、郵政から財投への資金移動がなくなり、特殊法人が合理化される
という点でした。
しかし、(1)に関しては代引郵便や払込手数料などが値上げされ、とくに定額小為替は大巾に上昇、集配局も極端に減り利便性は以前よりはるかに低下したのが現実である。
また、(2)については、これまでは税金を払わない分料金を安くできたのに、今後は税金分は値上げで埋め合わされるだろう。確かに税収はふえるがこれでは実質的増税と何ら変わらない。
さらに(3)に関しても、2001年に財投制度は既に廃止されていたのであり、郵政公社が特殊法人に資金をそのまま流していた訳ではなく、郵政は市場で民間銀行が買うのと同様に財投債(これには政府保証あり)等を導入して資金を運用していた。その財投債を政府が売って特殊法人に流していたのだから、特殊法人を温存していた責任は政府にあるのであり郵政とは無関係である。
ということで民営化のメリットは全て否定されます。むしろ問題は中長期的デメリットだとして氏は、今後3年以内にゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式が上場され、2017年までに売却されると間違いなく起こるのは、米国系金融機関やファンドがこれを購入することで株主提案権を得ることだとしています。
 経営のさらなる合理化要求により結果する窓口業務の縮小については、政府も2兆円の基金を運用する形で補助金を出すというが、2兆円を3%で運用したところで窓口の維持は無理、地方の窓口は確実に減ると指摘されています。そして外資が株主になることで予想される筋書きは、日本国債ではなく米国債での運用を主張してくることであり、それこそが最大の問題だと氏は主張するのです。
「もちろん、現時点での金利と信用度を見れば米国債を買った方が得だろう。しかし私のみならず、現在の米ドルをバブルだと見ている人は少くない。このバブルが崩壊したらどうなるだろうか。」
 つまり、現在のゆうちょ+かんぽの資金量を350兆円として、これを当時の115円/ドルのレートで換算すれば約3兆ドルとなりますが、ドルが暴落したらその損害は膨大となるはずです。2008年のリーマンショック後にこの危惧は現実化するのであり、因みに直後の90円/ドルで換算した時のゆうちょ・かんぽの総額は円換算で270兆円と、当初と比べ80兆もの損失を計上することとなります。預金保険機構の資金量をはるかに超えるゆうちょ・かんぽの資金は担保されず、預金者の”自己責任”のみが強調される中で、国富は大巾に減少していくことになるわけです。フルフォードは以上のような事態を想定して、小泉・竹中は郵政を第二の長銀にしようとしている-この時外資は長銀を10億で買い取り、後の新生銀行の上場益までを含めると6兆円もの利益を上げた-と主張したのでした。
 同様なケースは今後も多発すると思われますが、こうした政治のあり方に異議を唱える議員がほとんど落選したのが9・11郵政選挙であり、この時大手広告代理店を経由して膨大な資金がマスコミに流れたといわれています。当時の「ウォールストリート・ジャーナル」には、
「郵政民営化が実現すれば、350兆円もの巨額資金が日本から流れることになる。そのうち1~2%ぐらいの費用を使って日本のマスメディアを買収し広告を打っても惜しくない」
とする記事が載っていたというのです。そしてご承知のように、小泉政権は圧倒的多数で支持されるのですが、反対派の議員は”刺客”によってほとんど一掃されていったのでした。郵政民営化を”改革”反対派を”抵抗勢力”とする単純な図式を、NHKや民放テレビが連日のように流した背景には、こうした動きがあったとされています。

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