閉ざされた思考(資源エネルギー論1)

(2010年筆)

図3‐11 日本の部門別エネルギー消費量

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出典:資源エネルギー庁

 図3‐11は過去四十数年の我が国のエネルギー消費を表したものですが、これを見ると1990年代までは増加し続けてきた総消費エネルギーが、21世紀になってからはほぼ横ばいとなっています(2008年は金融危機の影響で特に減少した)。部門別にみると産業部門の消費量が第一次石油危機(1973年)頃を境にさ程増加しておらず、これはエネルギー効率が改善され省エネ努力が図られてきたこと、90年代からは円高による製造業の空洞化が進展した推移を物語っているようです。現時点でのエネルギー消費は、産業部門が1/2、民生部門(商店、事務所等含む)と運輸部門がそれぞれ1/4と考えればよさそうです。

図3‐12 日本の一次エネルギー総供給量

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出典:資源エネルギー庁

 では次に供給源別にみてみますと(図3‐12)、石油が51%、石炭とガスが38%、水力が3%弱、原子力と新エネルギーが11%弱となっています。エネルギー資源に乏しいわが国の現状、特に不安定な中東への石油依存度が高いことを考慮して策定されたのが、2006年の「新・国家エネルギー戦略」であり、そこでは2030年までの目標として、
(1) さらに30%の省エネを進める
(2) 原発の比率を総電力量の30~40%以上にする
(3) 運輸部門の石油依存度を8割に減らす
(4) 海外での資源開発を40%拡大する
(5) こうして石油依存度を40%以下にする
と謳われています。技術的に可能かどうかは別として、その方向へいけば日本のエネルギー問題には何の心配もなくなりそうに思われますが、実際のところはどうなのでしょうか。

 そこで、原発や代替エネルギーの開発には問題がないのか、最終エネルギー消費に占める電力の比率を高めていくことは何を意味するのかをみてみる必要がありそうです。

 田村八洲夫氏によれば、石油は非常にすぐれたエネルギーでありこれに代わり得るものとしては太陽光はもちろん、原子力発電も不可能だとされています。その理由として、「太陽光エネルギーで、自動車、業務、家庭、電力等で使われている石油量(石油使用量の67%)300万バレル/日を代替しようとすると、七億kwの発電設備、5,000キロ平方メートルのパネル面積が試算される」となり、これは日本全体の宅地面積の28%に匹敵する規模で、建ぺい率からいうと全建物の屋根に発電パネルを設置しなければならないという「空想」だと主張されます。また太陽光発電設備の製造とリサイクルに大量の石油が使用される点もネックとなるということです。

 また原子力発電については、CO地球温暖化論者はCOを出さない点を評価するのかもしれないが、「ウランの開発、輸送、改質、原子力発電所の建設、更新、発電定期検査、放射性廃棄物の輸送、管理等には、化石燃料が必要で、原発の電力だけで自立できない『石油依存』の電力エネルギーである。」とされています。また燃料としてのウランも逼迫する他、放射性廃棄物の解毒に10万~100万年もかかることが決定的短所であるといわれるのです。

図3‐13 日本のエネルギー量

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出典:資源エネルギー庁

 図3‐13は資源エネルギー庁のホームページに掲載されているので、国の公式見解といってもよいのでしょうが、一次エネルギーと最終消費エネルギーには-輸出他を差し引いても-26%ほどの差が生じています。これは一次エネルギーを他の形に変換するときに起こる損失とされていますが、電力に変換する時が最大で全供給エネルギーの1/4以上が失われることが見て取れます。原発にしろ太陽光発電にしろ、こうした電力化の過程での損耗が起きるとすれば、その点だけを考えても石油に変わる役目は担えないと思われます。この間の事情をさらに精査したのが近藤邦昭氏であり、氏は、(産出エネルギー量)/(投入エネルギー量)を「産出比」と定義して、産出比の大きいエネルギーでなければ基本的エネルギーにはなり得ないと言っています。詳しい計算方法は氏のホームページをご覧いただきたいと思いますが、石油の産出比は採掘時100、輸送・精製などを経た最終段階でも10ということで、「圧倒的に優れたエネルギー資源」と位置づけられます。これに対し石油火力発電の産出比は3~3.5と目減りし、原発では0.3~0.35と1を切ってしまうのです。太陽光や風力発電などの自然エネルギーについては、先述の田村氏同様の観点が提出されるとともに、その産出比は石油火力発電の1/2~1/3以下かそれを大きく下回るとされ、燃料電池システムの産出比が0.06~0.11程度であることから、「電気自動車は石油文明下の高価なおもちゃにすぎない」と主張されます。

 こうして代替エネルギーは、「目的とは裏腹に、既存の石油による供給システム以上の大量のCOの放出と、大量の産業廃棄物の山を作り出す」ことが明かされるわけです。

参考文献
世界経済のネタ帳
日本生活習慣病予防協会
日本経済新聞2010年10月24日朝刊
ボルマー&ヴァルムート著「健康と食べ物,あっと驚く常識のウソ」(草思社)
田中平三監修「サプリメント・健康食品の『効き目』と『安全性』」(同文書院)
福岡伸一「生物と無生物の間」(講談社現代新書)
赤祖父俊一「正しく知る地球温暖化」(誠文堂新光社)
オープンコンテントの百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日経電子版2009年11月26日
産経新聞2003年6月22日
【2010年ビルダーバーグ会議・緊急報告】”主役”不在の今年のビルダーバーグ会議。崩壊しつつある”グローバル・ガバナンス”の行方 (1) 2010年6月10日
農林水産省HP
ビジネスのための雑学知ったかぶり「日本の食料自給率は40%
財団法人エネルギー総合高額研究所HP
シフトムHP
近藤邦明「環境問題を考える
永濱・鈴木編「[図解]資源の世界地図」(青春出版社)
武田邦彦「温暖化謀略論」(ビジネス社)