地震学者に自由はあるのか 2013年7月

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 皆さんお元気ですか、朝比奈です。

 欧米紙のスクープや元CIA職員による内部告発の成り行きは、どうも目が離せなくなりそうです。
 報道によれば米国家安全保障局NSAは、マイクロソフト・アップル・グーグル・フェイスブック等IT大手9社から、メールや動画・サイトを見た履歴など個人情報を密かに収集していたというのです。スパイもどきの事件にビックリされた向きもあるかと思いますが、数年前「エシュロン計画」について調べた私などには、遅きに失する感がしただけでした(当サイエンスHPコラム「白昼の治外法権」参照)。

 基本的人権や言論の自由と公益の問題が根底にあるわけで、両陣営には根深い対立があるようですが、ここでは我国も早晩似たような状況になることを、2人の地震学者を例にとってお話ししたいと思います。
 1人目は、北大地震火山研究観測センターの森谷武男博士、VHF地震エコーの観測から東日本大震災前の異状をキャッチされた方です。03年の十勝沖地震(M8.0)や.日高山脈南部の地震群の観測で得られた精度の高い理論を生み出した博士は、大震災後も観測を続け、11年末には日本海溝南部で再びM9クラスの地震が発生するとHPに発表します。しかし、文部省と大学側からの圧力でHPは閉鎖、博士自身も3月で退官してしまうのです。
 ほぼ同時期に北海道での大地震を予知したのがもう1人の研究家塩井宏幸氏であり、こちらは独自のGPS測地論に基づくものでした。ちなみに塩井氏は、このあと偽計業務妨害の疑いで警視庁に逮捕、予報に必要な気象庁長官の許可がないことが理由でした。

 確かに両者の予測は外れましたが、学者生命にも影響する発表をあえてしたことは、大御所たちの集まりたる学会が予知を放棄しているのと比べたら勇気ある行動だと評価できるでしょう。問題はこうした地道な研究者たちの声が国民に届かない点で、特に国立大学が独立行政法人化された数年前から学問の自由も危機を迎えたようです。同様なタブーは日本史・現代史のほか多くの分野にあると思われますが、YES/NOで視ると関東大地震のエネルギーは再び活発化しており、先の塩井氏も予知を放棄する理由の一つに、「列島が抱える地震エネルギーは従来の予測をはるかに超えているほど巨大だから」と述べているのです。

 では、来月またお目にかかりましょう。