健康食品を科学する 2010年11月

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 皆さんお元気ですか、朝比奈です。

 先日の新聞に、コレステロールに関する記事と、健康食品全般に関する記事が出ておりましたので、今月はそのことを考えてみたいと思います。前者については、LDL(悪玉コレステロール)の血中濃度は高いほど悪い という意見(動脈硬化学会)と男性では低いほうが死亡率が高く、女性では高くても死亡率は変わらないという意見(脂質栄養学会)が対立しているようです(日経10/24朝刊)。

 そこで、外国のデータを調べてみたところ、体外からの摂取量がいかに多くてもまた少なくても--肉食に偏っていても菜食であっても--血中コレステロール濃度は、ほぼ一定に保たれているということでした。多ければ体外からの吸収はストップをかけられ、逆に少なければ体内の生産量が増える、こうした調節機構が身体にはあり、これが恒常性と呼ばれるメカニズムなのです。(ボルマー&ヴァルムート著「健康と食べ物,あっと驚く常識のウソ」草思社)。

 こうした結論は以前から予想しておりましたが、さらに調べると、コラーゲンが髪や肌・変形性膝関節症に良いとか、ブルーベリーが目に良いということなども、学会では否定されているようです(田中監修「サプリメント・健康食品の『効き目』と『安全性』同文書院」)。まぁ、中学校の理科を思い出してみれば、食物はすべて分子(ブドウ糖・アミノ酸・脂肪酸とグリセリン)にまで分解されてから吸収され、身体の中で個々人のDNAの下で再構成されて各部位に散らばっていくわけです。だからこそ、サメ軟骨由来のコラーゲンを摂っても私たちはサメにならずにすんでいるわけですし、逆にブルーベリーを大量にとっても、網膜のアントシアニンになるとは限らないのです。

 同日付の新聞には、健康食品はフードファディズム=偏狂的な食生活に結ぶつきやすく、食生活を改善したと錯覚させる点も問題と載っていました。ですから、あまりにも過激な考え方は改め、食に関しては新しいものをドンドン取り入れるより、古来から経験的に私たちに受け継がれてきた伝統に従うのが基本だと思いました。

 では、来月またお目にかかりましょう。