漫然とした治療を見直す必要性 2014年7月

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 皆さんお元気ですか、朝比奈です。

 報道によりますと、高血圧治療薬のディオバン(ノバルティスファーマ社)の臨床研究に同社子会社の社員が身分を秘匿して統計解析者として関与、さらに発表された論文のデータ操作にも問題があったとして撤回されたそうです。要するに薬の臨床試験データが改ざんされていたのですが、データ改ざんに関わった大学病院が複数あり、しかも億単位の寄付金を受け取っていたというのが実態のようです。こうした論文が権威ある医学誌に掲載されて同社は大きく売り上げを伸ばすわけですが、本質的には一つの薬をめぐる製薬会社・医療関係者・メディアの組織的詐欺事件と考えるべきでしょう。

 この事件を受けてかどうか、4月には人間ドック学会などの専門家委員会が、現在の基準で正常とされている数値の範囲を大幅に緩めるべきだとする調査結果を発表したのでした。「従来は130未満を『異常なし』としていた収縮期血圧は、147でも健康だった。肥満度をみる体格指数『BMI』も、男性で『18・5~27・7』、女性は『16・8~26・1』の範囲におさまれば健康だった。現行は25以上は肥満とされている。」さらに、「コレステロール値については性別、女性は年齢によって健康な人の値が大きく変わるとして、それぞれに分けることにした。現行の基準では特に閉経後の女性は高脂血症と診断されやすくなっていた」というのです。

 何をいまさらという感じがするのですが、問題は医療機関のいうことに黙々と従ってしまう人々の存在です。国民皆保険制度の弊害がいわれて久しい現在でも、多くの国民は経済的な問題や職場・地域・家族などのしがらみでなかなか病院から離れることができないのが現状です。しかし心臓疾患ですぐ手術しなければ助からないといわれた方が、薬をすべてやめてから副作用としての頻尿・倦怠感・食欲不振などから解放されたという例が示すように、漫然とした治療・投薬は疑ってかかるべきかと思われます。上記の例はよくなったからよいものの、中にはやらなくていい診断的穿刺によって回復不能の肝炎を患ってしまったなどの例もあるのです。病気の主体は私達なのですから、いろんな意見を聞いてよく考えるべきではないでしょうか。

 では、来月またお目にかかりましょう。