生命は合成されたのか 2008年2月

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 皆さんお元気ですか、朝比奈です。

 年末に日本の研究者による万能細胞の成果が報告されたかと思うと、つい最近アメリカのチームが細菌のゲノムの合成に成功したと発表され、《人口生命に道が開かれた》と大きく報道されたのは皆さんも良くご存知のことと思います。
 その基本的な手法は、右(朝日新聞1/25)のとおりです。

 しかし、よく見ると(1)のDNA断片を合成するまでは確かに in vitro な化学的過程といえるのですが、(2)以降の段階は in vivo な環境中で断片がつなぎ合わされるものであり、決して人工的な合成過程ではないことが分かります。これが人工的な培地や孵卵器のような道具の中で行われたのならいざ知らず、《生きている》大腸菌や酵母の力を借りなければならなかったという点に問題の本質があるのです。

 生命の定義はさまざまですが、この《生きている》という属性は生命を有するもの達にはすぐに分かる感覚でしょう。大腸菌のような単細胞生物であれ、私達人間のような多細胞動物であれ、確かに《生命》は細胞という基本的な物質にその活動の場を選びました。けれども、恐らく原始の地球においてコアセルベートがたくさん発生していた頃、ここに《何らかのもの》が吹き込まれて生命が誕生したのではないでしょうか。この《何らかのもの》こそ上記の実験で、《生きている》大腸菌や酵母から化学的に合成されたDNA断片に付与された力だと申し上げても良いと思われます。

 この先人類が生み出す技術はさらに高度化し、生命分野においても画期的な発見発明が続くことでしょう。けれどもこと病気に関しては、現代医学の本質が対症療法である限り、再生医療も遺伝子治療も根本的な解決策にはなりえないと私共は考えております。生命を違った角度から論議し、多様なデータを比較検討するという地道な作業の中から未来への架け橋が出来上がるのではないかと思っております。

 では、また来月お目にかかりましょう