オーパーツが物語る事柄

(2013年筆)

 私達が学校で学んできた人類の歴史は、4大文明が最初に起こり以降の文明はこの流れにあるとされていますが、この4大文明をはるかにさかのぼる超古代文明の存在や古代宇宙飛行士説の根拠とされる出土品が発見されていることは皆様もご存じのことと思います。オーパーツとは、out-of-place artifacts(場違いな工芸品)という意味で、考古学上その成立や製造法などが不明とされたり、当時の文明の加工技術や知見では製造が困難であるか不可能と考えられるもので、世上数々の発見(?)が報告されております。まぁ、遺物の解釈における誤解や分析の失敗・誇張された解釈があり、疑問が投げかけられるものも多いのですが、中にはまともな検討の対象にせざるを得ないものも結構あるのです。

 「人類の隠された起源」において人類史を数千万年も遡らせたクレモとトンプソンから始めますと、

  • 石切り場から発見された加工した柱やその道具(18世紀後半 仏プロバンス)
  • 採石場で発見された大理石に刻まれた文字(1830年 フィラデルフィア)
  • 採石場で見つかったデヴォン紀砂岩に埋もれた釘(1844年 スコットランド)
  • 石切り場で発見された石炭紀の石に埋まった黄金の糸(1844年 イングランド)
  • 先カンブリア時代の岩層から見つかった金属の壺(1852年 マサチューセッツ)
  • 第三紀の褐炭層から出土した丸い白亜球(1861年 仏ラ-ン)
  • 井戸掘削現場で出土した硬貨のような人工物(1871年 イリノイ)
  • 約200万年前の地層から見つかった粘土像(1889年 アイダホ州)
  • 石炭紀層から出土した黄金の鎖(1891年 イリノイ州)
  • 炭鉱から見つかった彫刻のある石(1891年 アイオワ州)
  • 炭鉱から出土した鉄杯(1949年 オクラホマ州)
  • 500万年以上前の岩石につけられた靴底の跡(1922年 ネヴァダ州)
  • 炭鉱で見つかったブロック壁(1928年 オクラホマ州)
  • 採石場の白亜紀層から出土した半卵形の金属管(1968年 仏)
  • カンブリア紀の頁岩から見つかった三葉虫と靴跡の化石(1968年 ユタ州)
  • 28億年前の鉱物層から見つかった溝の付いた金属球(1980年代 南ア)

ということになります。
 発見日時がだいぶ古いことと、その年代測定が20世紀以降に確定されたという点は確かに問題ですが、驚かされるのは数十億年前から数十万年前までと多岐にわたるその年代です。この年代をそのまま鵜呑みにすると、高度な文明が想像を絶するはるか以前から存在していたことになってしまいます。

 では、浅川嘉富氏はこの件をどう考えているのでしょうか。クレモとトンプソンがとり上げた事例のうち氏が考察しているのは、1844年の「デヴォン紀砂岩に埋もれた釘」と「石炭紀の石に埋まった黄金の撚り糸」、「1891年イリノイの石炭紀層から出土した黄金の鎖」のほか、「1980年代に南アで多数見つかった溝の付いた金属球」の件ですが、重要なのはこれらの年代であり、それは他のオーパーツに関しても共通する問題なのだということです。

 「こうした驚異的な『オーパーツ』を見てくると、どうやら、我々が数億年、数十億年前のものと教えられている地層は、そんなに太古のものではないことは確かなようである。そうでなければ、古生代や恐竜さえも存在しなかった先カンブリア紀に高度な文明を持った人類が存在したことになってしまうからだ。」

 氏はここから、放射性同位元素による年代測定が果たして本当に正しいのかという疑念を抱き、教科書的な地質年代について論じていくわけです。

 「この放射性年代測定法には一般的によく知られた炭素14測定法をはじめいくつかの方法がある。比較的その信憑性が高いとされる炭素14測定法や熱ルミネッセンス法には、対象物が有機物に限られる点や、1万年とか 2万年といった極めて短い年代しか調べることができないという問題点がある。  それゆえ岩や鉱物などを対象に、何千万年とか何億年といった年代を調べるには、『ウラニウム/鉛法』やこの方法で補正された『カリウム/アルゴン法』、『ルビジウム/ストロンチウム法』を用いることになる。
 ところが、これらの測定法はどれも決して一般的に信じられているほど、確かな数字を算出できる代物ではないのだ」

というのです。何故かというと、親元素の半減期が非常に長い点(ウラニウム238の半減期は43億年、ルビジウムの半減期は470億年)がまず問題で、これはもちろん人間が厖大な年数をかけて測ったものではなく、数年とか数十年の期間で測った減少率をもとに、それを数千万から数億倍した推定値だからだというのです。

 「それはあたかも、『時間単位の針しかない時計で、100メートル競走のタイムを計測している』ようなもので、最初の測定値にわずかな誤差があれば、半減期の年数はすぐに何千万年とか何億年と違ってきてしまうことになる」

とされます。
 さらに次の問題点もあり、それは放射性元素の崩壊速度がいつの時代でも一定であったとして算定されている点だというのです。つまり、数億年・数十億年といった膨大な期間を計算するに当たり、この間地球上の環境-大気の組成や大気圧・気温・圧力・海洋・磁場・重力など-に、いかなる変化も起きなかったことを前提にしていることが問題だとされるわけです。

 「もしも、そうした異常事態によって、高温や高圧下に置かれることがあったとしたら、ウラニウムに限らず、カリウムもルビジウムもその放射性崩壊の速度が、一段と早まった可能性は十分にあるのだ。核融合下での核分裂の速さはその典型的な一例である。
 事実、アメリカの著名な科学者セオドア・w・リブカ博士は、ウランの半減期の数値が過去の方が小さかったことを示す実例を明らかにしている。つまり、過去の方が崩壊速度は速かったというわけである。
 もしも、リブカ博士の主張が正しいものなら、これまでに計測された測定年数は短縮する方向、数十億年は数億年に、数億年は数千年へと修正される可能性が出てくる。」

といわれるのです。どうやら、私達はこれまで習ってきた常識的な地質年代をもう一度見直す必要がありそうです。

 実は、こうした結果は以前から予想されていたのですが、今回改めてYES/NOを行ったところ、地球の年齢は一般に信じられている40数億年を下回り、20数億年位だろうという結果が出た次第です。私どもは、キリスト教原理主義者のように、人類の年齢は6000年程度とか地球の年齢は最大でも8700年などと唱えるつもりはありません。しかし、現在のような年代測定法が考え出されたのが20世紀の半ばになってから、それまでの常識では地球の歴史はもっとはるかに短いとされていたのですから、ここはパラダイムシフトに向かうべきかと思います。

 さて、前項までの考察で私達は、超古代の高度な文明の痕跡を消し去ったのは地球膨張説が唱えるようなメカニズムに基づく地球環境の激変(大洪水・大地震・激しい火山爆発など)だったと知ったわけですが、この時起こったことの当然の帰結に、地質学的層序構造の変化があったはずだと思われます。どういうことかと申しますと、本来下から順に重なっていくのが普通である地層の順序が攪乱されてしまったのではないかということです。
 通常でも地層というものは、長い年月のうちに、褶曲や断層・侵食などによって変形したり断片化したり一部が欠損したりするものであり、できたままの元の地層をすべて見ることは難しいとされています。そこで、地層累重の法則(地層は水平に堆積する、その堆積は側方に連続する、古い地層の上に新しい地層が累重するの三法則)に従って復元され、それでもわからない場合は、示準化石や放射年代測定により新旧関係が判定されるわけです。

 しかし、もし100メートル・1000メートルの海水面の急上昇や、破滅的な地震・火山爆発などが起こった場合は、一体どのくらいの打撃が地表にもたらされるのでしょうか。大量の水は岩石や地表の植物を根こそぎにし、山を呑み家や街を洗いざらい破壊し、膨大な力ですべてが撹拌されてしまうのではないでしょうか。長大な年数をかけて堆積してきたとされている何十層もの地層の層序構造が失われ、短期間で一気に再堆積することも当然ありうることです。そして、こうした事実が過去にあったことを証明する"多層貫通化石"と呼ばれるものも出土しているのです。例えばカナダノバスコシア州にある「破滅の化石」と呼ばれる木の幹の化石は、数十mに達する地層を垂直方向に貫通する巨大な化石が、わずか数日か数週間のうちにできた事を物語るものであり、同様な化石はオーストラリアのニューキャッスルでも見つかっているのです。(参考

 ではこのようなカタストロフィは地球史上稀だったのか頻発したのかですが、ご推測の通りYES/NOの結果は頻発したとのことでした。少なくとも20万年前以降に限ってみると、6回以上はあったという結果が出ております。もしそうだとすると、文明の痕跡をあまりにさかのぼっても年代測定はおろか、遺物や遺跡そのものが出て来ないことになってしまいます。
 そこで、次項からは、ホモ・サピエンスが出現したとされる20万年前以降に話を限定するのが妥当だと思われます。

【参考書籍】
Wikipedia
松岡正剛の千夜千冊
・G.ハンコック「神々の指紋」上下(翔泳社)
浅川嘉富「謎の先史文明」?人類は恐竜と共存した? 第一回-五回
 (東京理科大学同窓会機関紙「理窓」 平成17年1・4・7・10月号、平成18年1・4月号)
・クレモ・トンプソン「人類の隠された起源」(翔泳社)
・本城達也「超常現象の謎解き
・星野通平「膨らむ地球」(「膨らむ地球」刊行会)
星野通平教授の研究室
・リレスフォード「遺伝子で探る人類史」(講談社ブルーバックス)
浅見宗平「ふしぎな記録」〈第3・4巻〉星雲社
渡辺長義「探求 幻の富士古文献?遙かなる高天原を求めて」今日の話題社
竹田日恵「『竹内文書』世界史の超革命」徳間書店
正氣久嗣「正しい霊とよこしまな霊」徳間書店