ホモ・サピエンスの拡散と先史文明

(2013年筆)

 かつて、人類はそれぞれの地域で進化してきたと思われていました。極端にいえば、北京原人が中国人に、ネアンデルタール人がヨーロッパ人にという具合で、これを他地域起源説といいます。しかし現在では、ホモ・サピエンスの起源に関しては単一起源説が主流であり、YES/NOで視てもそのような結果が出ております。すなわち、現在の人類はすべてアフリカ起源で、アフリカを脱出したホモ・サピエンスが世界各地に散って今日の様々な人種になったと考えられているのです。見かけ上かなり異なるように見える現在の「人種」も、生物学的には単一のホモ・サピエンスというものになり、他の化石人類は絶滅したとされています。

 しかし、現生人類の出現やネアンデルタール人の行き先についてはまだはっきりとわかっていないことも多く、未だ決着がついたとはいえない状況です。例えば、J.リレスフォードによると、

 「約13万年前にアフリカで誕生した現代型人類が世界に拡散していき、その地域で古代型人類と混合して現在の人類が生まれた」

というのです。
 確かに、化石的な証拠によると、ネアンデルタール人と現生人類は少なくとも数千年間同時代を生きていたことが分かっているのですが、ミトコンドリアDNA等の遺伝的証拠からは、両者の間に子孫ができたか否かは不明であるとされています。仮に子孫ができたとしても、両者が別種であればその子孫には繁殖力がなく、もし繁殖力があったとしても長い間には数で優った現生人類の遺伝子プールに彼らの遺伝子的特徴はのみ込まれて消滅してしまうというのです。こうして、遺伝学的にもネアンデルタール人の消息は不明となってしまうのですが、リレスフォードはここでもう一度化石的痕跡に戻ることで、上記の結論に到達するわけです。

 「ネアンデルタール人は現代型人類の大きなジーンプールに圧倒されて、1つのグループとしては消滅した。ネアンデルタール人の遺伝子のわずかな部分は、今でも私達の中で生きながらえているかもしれない。だが、私達の遺伝子の大部分は、アフリカ起源なのである。」
kahaku_14a_b.jpg

 ホモ・サピエンスの拡散については、上の図で示したような経路が一般的とされていますが、これと矛盾する事実も多く、謎はまだまだ残っています。また、日本列島への到達に関しても未だ定説が形成されるに至らないわけですが、一応は以下のように説明されています。

kahaku_JomAns.jpg
 「①アフリカで現代人(ホモ・サピエンス)にまで進化した集団の一部が、5~6万年前までには東南アジアに来て、その地の後期更新世人類となった。②③次いで、この東南アジア後期更新世人類の一部はアジア大陸を北上し、また別の一部は東進してオーストラリア先住民などの祖先になった。④アジア大陸に進出した後期更新世人類はさらに北アジア(シベリア)、北東アジア、日本列島、南西諸島などに拡散した。シベリアに向かった集団は、少なくとも2万年前までには、バイカル湖付近にまで到達し、寒冷地適応を果たして北方アジア人的特徴を得るに至った。日本列島に上陸した集団は縄文時代人の祖先となり、南西諸島に渡った集団の中には港川人の祖先もいたと考えられる。⑤さらに、更新世の終わり頃、北東アジアにまで来ていた、寒冷地適応をしていない後期更新世人類の子孫が、北方からも日本列島へ移住したかもしれない。⑥そして、時代を下り、シベリアで寒冷地適応していた集団が東進南下し、少なくとも3000年前までには中国東北部、朝鮮半島、黄河流域、江南地域などに分布した。⑦⑧この中国東北部から江南地域にかけて住んでいた新石器時代人の一部が、縄文時代の終わり頃、朝鮮半島経由で西日本に渡来し、先住の縄文時代人と一部混血しながら、広く日本列島に拡散して弥生時代以降の本土日本人の祖先となった。」

 この経路をYES/NOで視ると圧倒的にNOと出ますし、この拡散は主に陸路でなされた(地球膨張論からは当然の結論だが)とも出ますので、まだまだ研究の余地は残っていると思われます。こうした人類の痕跡をたどるには石器や人骨などの物証が必要となるわけですが、日本における研究が進まないのは、土壌が酸性であるため人骨が溶解しやすく、石灰石などの中に運良く埋まっているような場合にのみ発見が可能となるためといわれています。そうして発見されたのが沖縄や静岡の人骨なのですが、これらから推測できる原日本人の歴史は、現在の所3~4万年前以降となってしまうようです。

 ここで読者には、「前提(1)人類の起源」をもう一度思い起こしていただかねばなりません。そこでのYES/NOで明らかになったのは

①ホモ・サピエンスと超古代文明を担った人類は同一ではなかったという点と、②現生人類とは異なるこの「人類」の誕生は約3000万年前という点でした。

 実は、この2点が先史時代に重要な意味をもってくるのであり、何故ならこの「人類」は地質時代の幾多のカタストロフィを乗り越えて、一部に存在していたことがYES/NOの結果判明したからなのです。この「人類」は、旧石器文化とは異なる文明を成立させていたようで、これが浅川氏のいう先史文明だったのではないかと思われます。しかしこれらの文明を推測させる遺跡等は、-一部の研究者によるオーパーツ等を除いては-どこからも出ていないのが現状です。

 YES/NOで視た結果によりますと、「カブレラストーンは旧人によって製作されたものではない」と出ていますので、 次に私達はもしこの「人類」の文明が滅んだとしても、当時の旧石器人との遺伝子的交流(交配)はまったくなかったのか、何らかの遺伝子的特徴が過去・現在の人類に残されているのではないかという反論にあうのではないでしょうか。けれども、先ほどのリレスフォードの考え方を基にすると、ミトコンドリアDNA等の遺伝的証拠からは、両者の間に子孫ができたか否かに関わらず、長い間には数で優った現生人類の遺伝子プールにこの「人類」の遺伝子的特徴はのみ込まれて消滅してしまうことになり、何らかの決定的証拠がなければ、ここから先は何とも言えないということになってしまうようです。
 

【参考書籍】
Wikipedia
松岡正剛の千夜千冊
・G.ハンコック「神々の指紋」上下(翔泳社)
浅川嘉富「謎の先史文明」?人類は恐竜と共存した? 第一回-五回
 (東京理科大学同窓会機関紙「理窓」 平成17年1・4・7・10月号、平成18年1・4月号)
・クレモ・トンプソン「人類の隠された起源」(翔泳社)
・本城達也「超常現象の謎解き
・星野通平「膨らむ地球」(「膨らむ地球」刊行会)
星野通平教授の研究室
・リレスフォード「遺伝子で探る人類史」(講談社ブルーバックス)
浅見宗平「ふしぎな記録」〈第3・4巻〉星雲社
渡辺長義「探求 幻の富士古文献?遙かなる高天原を求めて」今日の話題社
竹田日恵「『竹内文書』世界史の超革命」徳間書店
正氣久嗣「正しい霊とよこしまな霊」徳間書店